株式会社水域ネットワーク【風況の調査・解析】

 風観測データを収集整理して、風向風速の出現頻度・出現特性を検討します。 また、風観測データから風向別年最大風速を抽出し、Gumbel・Weibull・極値II型分布関数の計9パターンによりフィッティングを行い、棄却基準(上向DOL,下向DOL,REC)による評価後、MIR基準により最適な分布関数を抽出しこれによる確率風速を算定します。統計解析に用いる風速値は、従来から適用されている高さ補正及び地形補正のやり方に加え、三次元非線形風況シミュレーションにより風向毎に補正することも出来ます。


風観測統計解析
(↑クリックすると拡大表示)
 MASCOT(Microclimate Analysis System for Complex Terrainの略)は三次元非線形風況予測を行うモデルです。このモデルは、わが国のように急峻で複雑な地形に適用する場合、従来の線形風況予測モデルに比べ高精度で風況を予測することを可能にします。これまでは風観測データを基に任意地点での風況を詳細に予測することを主体にしていましたが、現在では気象シミュレーション(メソスケール気象モデルによる時系列風況解析)により得られる風況をベースにして、MASCOTによりマイクロスケールモデルでの風況予測を行うことが出来るようになりました。これにより、近隣で風観測データが得られない地域においても、任意地点での風況予測ができます。

風況予測
(↑クリックすると拡大表示)
 風力発電は、有限な化石燃料に替わるクリーンなエネルギーとして注目され、デンマークやドイツなどの先進国にならい、わが国でも着々と整備が進められてきています。風力発電機が設置されるまでには、事前調査、現地調査、風況精査などの基礎調査を踏まえて設計・施工が行われていきますが、風況を正確に予測することは事業収益に直結するため極めて重要度の高い検討事項になります。MASCOTによる風況予測は、風力発電事業を計画する上で重要な役割を担っています。

発電量予測結果
(↑クリックすると拡大表示)

 風荷重が主要外力となる場合の設計風速は、設計対象物の安定性・安全性に直結します。近隣域での気象観測所で得られた風観測記録に基づいて設定された設計風速は、設計地点の局所的地形や地表の状況を充分に反映した設計値として設定されていないことが考えられます。MASCOTの解析により得られる設計風速は、港湾・漁港の付帯施設や臨港施設、建築基準法が適用される高さ15m超の工作物に対して、その地点の風況・地形・地表特性をより高精度に反映した安全性・信頼性の高い設計条件を実現します。

設計風速評価(風況断面図)
(↑クリックすると拡大表示)
 内湾域など閉鎖性海域で発生する波浪の予測は、近隣における風観測資料を基にS.M.B.法により波浪推算する手法が一般的です。この場合、風域となる海面上10mの高さでの風速値を観測機器設置地点の標高、機器の地上高さ、周辺建築物の高さや密集具合など、様々な要因の影響を考慮して換算します。しかし、従来より適用されている海風(海→陸方向に吹く風)と陸風(前者の逆)の区分や観測地点の海岸線からの距離に基づいて行う補正方法では、現地の状況を真に反映して精度よく補正することが難しいのが実情です。そこで、「三次元非線形気流予測モデル(MASCOT法)」により、風域を含む十分広い範囲の陸地、建築物などを3次元の標高データにし、風域から十分離れた位置から一定の気流(風)を流し、風観測地点と波浪推算海域地点の風向風速をモニターすることで、風速値の差異、風向の偏向を全16方位についてシミュレーションすることで海上風への換算条件(風速の増減係数、風向の偏向角)を詳細に求めていきます。
 これらの検討は、既述の風況予測の応用例ですが、この他にも港湾・漁港施設周辺における防風対策や砂浜海岸背後域に対する飛砂対策などの検討に、幅広く応用することが出来ます。

海上風推算
(↑クリックすると拡大表示)